仰角と俯角

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 視点と対象の上下関係を示す指標です。
 仰角は対象を見上げる(仰瞰)場合の視線の水平に対する角度をいいます。
 俯角は対象を見下ろす(俯瞰する)場合の視線の水平に対する角度をいい、この角度によって見え方が変わります。
 富士山は、眺望地点の多さでも際立っています。
 標高が3776mの独立峰であることから、筋の可視範囲は東北方面、南西方面では200kmを超えます。
 富士山の眺め方は、距離の遠近(みかけの大きさ)、方向(宝永山の可視・不可視や傾斜の違い)、および前景を構成する地形的特色がポイントとなっています。
 太宰治は、十国峠からの富士を賞賛し、小島鳥水は富士山眺望の好適地を箱根乙女峠・甲斐御坂峠・駿河龍華寺・伊豆の達磨山を挙げ、 河東碧梧桐は、表富士については駿河龍華寺・大瀬崎を双美とし、裏富士については精進・本栖湖湖畔を絶賛しています。
 景観地理学者辻村太郎は、「富士山は40km内外の距離から眺めると優美にも見え、威厳もそなわっている」といい、著名な眺望点として三保松原・久能山・達磨山・龍華寺などをあげています。また、伊勢原・秦野における眺めを「宝永山のこぶなどもなく、形としては最も整っている」とし、茅ヶ崎〜葉山海岸での眺めを「秀麗」と評しています。
 主立った眺望点から望む富士山頂の仰角は、ほとんどが「山容を身上とする山にとって最も好ましい眺望仰角」とされる9度近傍(参考引用 景観用語辞典)を下回っています。